2008年10月28日(火曜日)
さて、小説の話を。今日は、書いたあとの話。 1)ひととおり書いたら、見直すまえに担当編集者に読んでもらう。すぐに見直したりはしない。できるかぎり時間を置いた方が良いことが経験的にわかっている。もし可能ならば、半年くらい見ない方が良い。読む暇があるのなら、次の作品をすぐに書こう。 2)頭が冷えたところで、人の意見も聞きつつ、また、自分も新たな気持ちで読みながら、手直しをする。初めから読みながら直していく。この作業は、最初の執筆とほぼ同じくらいの時間がかかる。何度も見るわけではない。ひととおり、つまり1回しか読まない。 3)これで原稿が完成する。これを再び編集部へ送り、ゲラにしてもらう。ゲラというのは、本になるときのレイアウトにした仮の印刷物だ。僕のところへ届くまえに、校閲の人がこのゲラを読んで、間違いや矛盾点を指摘してくる。鉛筆でその指摘が書かれているものが届く。それを見て、直すのはあくまでも作者である。ちなみに、僕は、ゲラの段階で大きな変更や修正はしない。 4)ゲラを読み、校閲の指摘にも答えつつ、赤を入れていく(赤いサインペンで修正をする)。これも僕は、1回しか読まないのだが、最低でも1週間はかかる。執筆の半分くらいの時間を要する。 5)ゲラを見た結果を編集者に手渡す。数日後、赤で修正した箇所が直って、ゲラの2校が出る。これをまた校閲の人が見て、また間違いや疑問点を指摘して鉛筆を入れてくるので、もう1度読んで、赤を入れていく。 6)この結果を送ると、もう一度、編集部で確認があって、疑問点を尋ねられることがあるが、それに答えれば校了になり、印刷所への入稿となる。これとは別に、表紙カバーのデザインや、その他いろいろなものが同時進行し、そのつどチェックが来る。しばらくすると、本が生産される。 7)本が発行したあとは、読者からメールが届く。誤植やミスが指摘されていることがあるので、編集部に伝える。重版になったときには修正ができる。 8)通常、最初は単行本(ハードカバー)が出る。その1年か2年あとにノベルスになる。文庫になるのは、最初から3年後である(僕の場合、希望して文庫を早めに出しているシリーズがある。たとえば、「スカイ・クロラ」シリーズは1年後に文庫にした。)。最初にノベルスから出る場合も、その3年後に文庫になる。文庫が一番部数が多い。ノベルスや文庫になるときも、そのつどゲラが作られ、校閲がチェックをして、それを作者が修正する、という同じ手順を辿る。 9)僕は、自分の書いた小説を、ゲラ以外では読んだことがない。本になったものを開いて読んだ経験がない。昔の作品を読み返すことはしない。読者から指摘があったときに、その部分を見直す必要があるけれど、たいていはその本が見つからない。整理して本棚に並べていないので、家のどこにあるのかさえわからないのだ。