2008年09月06日(土曜日)


中学のときだったか、たぶん、古文の授業でならったはず。徒然草に、双六(すごろく)の名人の話がある。この名人が、勝負の秘訣は「勝たんと打つべからず」「負けじと打つべきなり」と教える。勝つ方法を考えるのではなく、負けない手を考えろ、少しでも負けるのが遅い手を探せ、というわけだ。まあ、そんなものかな、とそのときは思った。どうだろう、わりと積極的に攻めに出た方が勝機があるのでは、と思うこともしばしばで、ここまで悟った境地には、とても自分は達しないだろう、と考えたものである。 ところが、この年齢になって1つ思うことがある。それは、人生の成功、仕事の成功、など、いろいろな成功者がいるのだが、「成功」とは、なにか1つの幸運で起こるものではない。そういう例を僕は見たことがないのだ。少なくとも、数多くの成功を積み重ねていき、しだいに困難になるものの、その状態を「維持」することが成功なのである。また逆に、「失敗」とは、あるときただ1つの不幸や失敗で起こりうる。もちろん、失敗が起こる原因も、振り返るとやはり1つではなく、複数のものが重なっていることが多いが、現象としてはただ1回の失敗でご破算になる事例が多い。極端な話、不正なことをしてそれがばれれば、もう社会での成功はありえない。こうしてみると、「成功」が、いかに「失敗しない状態を積み重ねること」かわかるだろう。「成功」とは、「成功を持続すること」であり、ようするに「失敗しない状態を維持すること」だといえる。

こんな教訓というか名言というか、この種のものは、どうも嘘っぽい。「議論の余地しかない」のゲラを読んでいて、そう感じた。嘘っぽいからこそ、格言になるのだろうか。

via: MORI LOG ACADEMY: 勝たんと打つべからず