2007年12月22日(土曜日)
人間が写っていない写真が見られない。文章がない写真集を長時間見ていられない。説明がない展示物は見られない。ボーカルがない音楽が聴けない。誰かが解説していないと、自分の感動が確かめられない。そういう人が多いのだ。子供のときの育ち方の問題もあるだろう。 僕は既読の小説は二度と読まないが、絵や映像は何度も見る。展覧会に行けば必ず画集を買う。映画を見れば必ずパンフレットを買う。1枚の絵には、小説1作に等しい情報量があるので、短時間ではとても理解できないし、映画も2時間では、そこに盛り込まれたすべてを見ることができないからだ。 数年まえに「猫の建築家」という絵本を出したのだが、僕はこれを本格ミステリィだと考えている。仕掛けやオチに気づかない人が非常に多く、活字に慣れている人たちが、いかに絵を見ないかということを思い知った。先日、家に遊びにきた小学2年生の子にこの本をあげたら、その子は、ぱらぱらとその場で読んで、たちまち「あれ、ここはどうして?」と質問した。子供の観察眼は、本当に鋭いと思う。文字を読み、人の話を聞くことで、成長するほど目が見えなくなるのだな、と思った。