2007年12月04日(火曜日)


僕が下描きをしてスバル氏がペン入れをする、というイラストの仕事があるため、彼女の絵の描き方が、僕と違うのを思い知った。彼女は、とにかくサンプルを欲しがる。インターネットを調べたりして、実物がどんなふうかを参考にして絵を描くことが多い。僕は絵のために調べものをするようなことはまずない。 たとえば、カメラのイラストを描く場合、彼女は実物のカメラを参考にする。しかし、そこにあるボタンや目盛りが何の意味なのかは考えない。僕は実物のカメラは見ない。しかし、写真を撮る機械ならば、ここにこんなボタンがあるはずだ、持ちやすいように、ここにグリップがあるはずだ、という具合に道理を考えて絵を描く。このアプローチの違いは世間のクリエータを二分するものではないか。つまり、前者は写実であり、後者は理屈なのである。

小説を書くときも同じことがいえると思う。僕は、実際の場所や人物を取材するようなことはまずしない。ただ、たとえば、こういった機能を持つ建物なら、こんなふうでなければならないだろう、という設計を頭の中でしている。実物がどうなっているのかを知り、そのとおりに描くのがリアリティだとは考えていないのだ。もしかして世間では、実際にあるものを参考にすることが、すなわちリアリティだと考えている人が多いのかも。だから、リアリティのあるなしで話が噛み合わないのだな、と気づいた。僕の場合、現実に存在するものでも、リアリティがないと感じるものがあるくらいなのだ。 少なくとも、漫画やイラストを描く人は、写実派の人が多いと思われる。僕が知っているイラストレータや漫画家はほとんどそちらだと観測される。もしかしたら、日本人の傾向かもしれないが。

via: MORI LOG ACADEMY: リアリティへの2つのアプローチ