2007年05月27日(日曜日)


ものを設計するときに最も肝心なことは、作るものが将来どうなるのかを想像することだ。経験が浅いほど、完成時までの想像しかできない。実際に自分が作ったものが使用され、問題が生じ、あるいは劣化し、ついに廃棄されるまでの流れを経験すれば、学ぶことは当然ながらある。しかし、そういった経験則だけでは不足だ。 つまり、同じ機能のものを作り続ける伝統工芸のようなものならばそれでも良いが、次々新しいものを作る場合には、常にこれまでにない要素が入るため、過去の経験だけでは補えない。そこは、なんとか憶測するしかない。 まずは、トラブルが起こらないようにすること、そして、その次には、トラブルが起きたときに対処がしやすくしておくこと。前者は誰でも考えることだが、後者をデザインに取り込める人はかなりの達人である。最適化されてしまうと、かえって直しにくいものが出来上がる。機械類でいえば、少々無駄があっても、ある程度ユニット化されていて、取り替えられる機構が好ましい。消耗しそうな部分、将来改善されそうな部分を交換しやすいように設計しておく。これはプログラミングなどでもまったく同じである。ただ、いったいどこが、そういった部分になるのか、という見極めが非常に難しい。ここも憶測するしかない。 他人の作った機械やプログラムを直すことになって、中を(リストを)見てみると、非常に考えられた機構になっていて、設計者の見識に感服することがある。こういった「優しさ」は、滅多に表には現れないが、大事な技術だと思う。

via: MORI LOG ACADEMY: デザインは想像力