2007年05月05日(土曜日)
もう何冊も本を作ってきて感じることだが、この文芸の出版界では、絵を描く人間に対する扱いが、少し間違っていると思う。イラストレータが非常に低く評価されているのだ。挿絵などの仕事もそうだし、また本のカバーに使われるイラストに対しても、報酬が少なすぎる。もちろん、新人はこれくらいで良いのかもしれないが、人気のある作家になれば、今の5倍支払っても安いと僕は感じる。 「絵を描く人間はいくらでもいる」「絵は、本人が描きたくて、楽しんで描いているものだ」「描かせてやっている」という気持ちが編集部にはあるのではないか。絵の価値がわかる人間が少ないことも原因の1つだろう。 そういう絵の価値がわからない人が、仕上がってきた絵に対して、注文をつけることがある。僕もいくつか聞いて知っていることだが、本当に馬鹿みたいなケースが多く、絵を悪くする方向への注文であることもしばしばだ。こういう場面に何度も遭遇するうちに、イラストレータは、絶対に締切よりも早くは絵を仕上げなくなる。むしろ締切を過ぎて、もうこれ以上は遅らせることができない、というぎりぎりで提出すれば、理不尽な注文を受けなくて済むからだ。イラストレータのこの防御はよくわかる。 イラストレータの名前が載っていない本さえ沢山ある。載っていても、どこかに小さくちょっとだけだ。稿料は安いし、期間は短いし、こんな条件では、いい加減な仕事になるのもしかたがない。 僕が編集部に提案していることは、締切に間に合えば2倍(あるいは3倍)の料金を払う。最初の打合せになかった注文をつけて一部でも描き直しを要求する場合は、もう1枚分の料金を支払う。絵のすぐ近くに作者名を必ず入れる。これだけで、待遇は改善されるし、締切も守られるだろう。「いやあ、それは無理ですよ」と本気で考えられない編集部ばかりだ。良いものを作りたいんじゃないのか、売れる本を作りたいんじゃないのか、と不思議に思う。とにかく、頭が古いのである。編集部も民営化したらいかがか。