2007年03月14日(水曜日)


1つは、ある出版社から、昨年 12 月に重版した8冊の本の支払い明細が届いていなかったこと。郵便事故で届かなかったのかもしれない、と思って再発行をお願いした。 すると、この8冊を 3 月に発行しました、という新しい書類を作って送ってきた。そうではない、既に 12 月に発行したという書類は受け取っているのだ(だからこそ連絡している)。新たに書類を作ってしまうなんて、なんともその場限りのいい加減な対応である。 発行後2カ月以内に支払いがあり、そのとき明細を送ってくるはずなので、もう1度問い合わせた。すると、「それは未払いでした。今月末に支払う予定です」との連絡があった。しかし、契約の期限を1カ月以上過ぎている。そのことに気づいていないのか、ともう一度問い合わせたところ、その後3日間、経理の部長も担当者も病気で出社していない、という連絡が毎日来る。会社組織として機能していないようだ。 もう1つ。ある出版社から、僕に著作権のある本が出版された。既に文庫に収録されている短編を数編掲載したいとの手紙を半年ほどまえに受け取った。住所が間違っていたので、方々を経由して転送されてきた手紙だった。この種の企画は比較的多い。たとえばアンソロジィだとか、デジタル出版、特定の人向けの特殊な本など(ある意味で、翻訳本も同じか)。一応「承諾」の返事をした。そのうち具体的な連絡があるだろう、と思った。メールアドレスはHPに公開しているし、講談社へ郵送すればこちらへ転送される(と同じくサイトで案内されている)。 ところが、その本が出版され既に書店に並んでいたらしい。書店で見たという読者から数通メールをいただいたが、ミスが沢山あったそうだ。たとえば、表紙の森博嗣のローマ字表記が間違っている、解説中で作品名に間違いがある、など(これは小事である)。実はもっと重大なミスもあった。 その出版社の担当者から最近メールが届き、「見本を送ったが、住所が違っていて届かなかった」とのこと。住所を教えた覚えはない。何故、さきに連絡をしてこなかったのか? それ以前に、本を作る段階で、メールを1つ出すだけのことが何故できなかったのか?

この2件は、いずれも、下手をすると犯罪といわれても文句がいえないレベルであるが、こんなことでいちいち腹を立てていたらこちらが損なので、これ以上追及しない。出版界では、この程度のルーズさはごく普通のことなのだ、とこの 10 年で学習した。締切一つとっても、ほとんど守られていない。10 年まえの僕だったら徹底的に戦ったかもしれない。若かった僕は、戦った方が社会のため、みんなのためになると信じていたからだ。今はすっかり諦めた。 一般には、締切を守らないのは作家の方らしい。そういう人ばかりだと、これが問題にならず通っていくのだろうか。僕にとって出版界は、気持ち良く仕事ができる環境ではない。早く足を洗いたいと願っている。

via: MORI LOG ACADEMY: 環境が悪い