2006年11月15日(水曜日)
前回の 11 頭のロバを知らなかった人が、わりと多かったので驚いた。世界の人口の 2 割、日本の人口の 7 割くらいは知っているものだと認識していたからだ(冗談)。「どうして、息子たちが遺言を守らなかったのかが、わからない」というメールもいただいた。そこで、今回は、オリジナルバージョンとして、「1頭のロバ」というお話を考えた。「1杯の味噌煮込みうどん」にしようかと思ったが、凝りすぎると、わかりにくくなるので断念した。 死んだ父親が一人息子に遺したのは、1 頭のロバと遺言だった。遺言には、「おまえには、1/2 をやろう」と書かれていた。そこへ賢者が 1 頭のロバを連れて現れた。「このロバを君にあげよう。ほら、2 頭になった。これで、君は 1/2 の 1 頭を安心して受け取れるだろう」と賢者は言った。 なるほど。自分は 2 頭の 1/2 の 1 頭をもらい、残った 1 頭を賢者に返せば良いのか、しかし、少し変だぞ……、と息子は首を捻る。そして、考えたすえに、こう言ったのだ。「父が残してくれたうちの 1/2 は、遺言どおり僕のものであって、それに貴方からもらったロバを加えると、僕は 1.5 頭をもらう権利があります。お礼に、残った 0.5 頭を差し上げましょう」 これが正しい。賢明な息子であり、賢者は単なる奉仕者として、真に人を救ったことになる。 以上から考えて、11 頭で悩んだ3人は、以下のようにするのが正しい。 賢者からもらった 1 頭は遺言を参考にして 6:3:2 の比率で分け、父からの遺産と合計する。したがって、11×1/2 + 1×6/11 = 133/22 = 6.045 頭を長男が、11×1/4 + 1×3/11 = 133/44 = 3.023 頭を次男が、11×1/6 + 1×2/11 = 133/66 = 2.015 頭を三男がもらうのだ。この方が、3人とも実は若干得をする。そして、父親が指定しなかった 11 頭の 1/12、すなわち残りの 0.917 頭を賢者に返す。賢者も文句は言えないはずだ。