2006年10月13日(金曜日)


「目指す」という言葉があって、たいていは希望的な、前向きな、積極的な、良い意味で使われている。「〜を目指して頑張ります」というもの。目指す対象は、つまり目標というか、到達点の1つとなる。それはそれでけっこうなことだが、僕の見た範囲で感じることは、目指していると大したものにはならない、というやや悲観的な結果である。目指すというのは、結局のところ「良くてそこまで」という限界を最初から決めているような行為だからかもしれない。 「目標を高く」なんていうのも、よく耳にするが、「到達できなくても良いから」という甘えが最初からある。それは逆であって、目標はできるだけ低く見積もるべきだ。そして、そのハードルを日々確実にクリアして前進する、という方が良いのではないか。 ずっと以前から何度も書いている持論だが、「第2世代は、第1世代を超えられない」という法則がある。これは、たとえば、ゲームで育った世代がゲームを作る立場になっても、最初のゲームを超えるものは作れない、というような意味である。第1世代には、「目指すものがなかった」ということが、かけがえのないアドバンテージになるからである。 こういった法則を信じている森博嗣なので、中高生から「僕は将来小説家になりたいのですが、今しておくべきことは何でしょうか?」という質問に対しては、「小説を書くことです。そして、人の小説を読まないことです」と答えることにしている。

via: MORI LOG ACADEMY: 目指すものがない