2006年03月10日(金曜日)


「理科」という言葉は、学校の科目のことであるが、英語では、Science であり、つまり「科学」のことだ。「科学」というと、「工業技術」的なイメージを持ってしまい、生物や地学などを科学の範疇から無意識に除外している人が多い。 「自然科学」という言葉があって、これは何が自然かといえば、ようするに自然現象すべてを対象とする。だから、天文学、物理学、化学、地学、生物学すべてが自然科学である。では、自然科学でないものは何かといえば、それは「応用科学」と呼ばれる分野であり、これがすなわち「工業技術」に近いイメージとなる。 応用科学とは、科学技術を応用して、社会の役に立てよう、資産としての価値を高めよう、生産効率を上げよう、という分野だ。日本人が、科学で連想しているのは、むしろこちらに近いかもしれない。歴史的に見ても、最初の段階の遅れを取り戻すために、日本は一段を飛び越えた感はある。 自然科学は別の言葉でいえば「基礎科学」であり、小学校で習う理科はすべてここに含まれている。ところが最近では、これと人の生活を結びつけ、科学がどのように人の生活を豊かにしているか、という観点から教育をしようという動きがあるようだ。いよいよ応用科学が理科にも入り込んできたのか……、というと、既にずっと昔から行われている。 たとえば、戦前の小学校では、模型飛行機の作り方を教えたりしたそうだ。「技術」という科目に近い内容である。応用科学は、一旦は基礎学力からは排除され、もう一度復権しようとしているように見える。 科学の教育で大切なことは、ものの名前を教えることではない。植物や動物の名称を試験で問うことは科学ではない。それは、数学の試験で、法則を発見した数学者の名前を問うようなものである。何故、植物がそんな形態になったのか、何故、鳥は空を飛べるのか、それを問うのが科学である。

via: MORI LOG ACADEMY: 自然科学